歯ぐきの黒ずみは時に大きな審美障害を招きます。
歯ぐきの黒ずみは、相手に与える印象にも影響し、コンプレックスをお持ちの方も少なくありません。
歯ぐきの黒ずみにはさまざまな原因があり、原因に応じた対応が望まれます。
30代 女性 主訴 大きく笑えない
こちらの患者様は前歯のかぶせものの際(きわ)の部分と周囲の歯ぐきが黒くなっており、大きく笑えないことに悩んでおられました。
黒くなった原因を見極めるためにも、かぶせ物から外していくことになりました。
診査・診断
かぶせものを外してみると、3つの問題が判明しました。
①非常に大きな金属の芯棒が歯ぐきのかなり深い位置まで入っており、以前の治療時に金属の削りかすが歯ぐきの深部にまで入り込んでしまっていることが確認できました。
②歯ぐきから露出して見えるのは金属のみで、根の部分は見えない状態です。これではかぶせ物が根の部分をつかんで一体化することが難しく、維持力が低下します(専門用語で「フェルール」と言い、フェルールが欠如している状態です)。差し歯が外れやすくなる方は、こういうところに原因がある場合が多いです。
③歯ぐきのラインが隣の歯に比べると低い位置にあり(水色のライン)、左右の対称性が損なわれているため、見た目が悪くなります。一般的に上アゴの左右の1番目の歯の対称性は、審美的結果に大きく影響を及ぼします。
②と③の問題を解決するためには、歯周外科処置を用いて歯ぐきのラインを黄色のラインへと改善していく必要がありました。
ただ、①の問題に対しては、一度に全ての黒い部分の歯ぐきを除去してしまうと歯ぐきに穴が空いてしまい、歯ぐきの対称性が損なわれ、歯が非常に長くなってしまうことが予測されましたので、歯肉移植を用いて一度歯ぐきを分厚くしてから、黒ずみの部分のみ改めて除去することとしました。また、金属の芯棒はあまりに大きく、除去すると歯が残せなくなるリスクが高かったため、患者様と相談の上で金属の芯棒は除去しないこととしました。
歯周外科処置(歯冠長延長術+結合組織移植術)
歯ぐきの対称性が得られるように、歯ぐきの不要な部分を除去して、必要な調整を行いました。(歯冠長延長術)
そして、最終的に除去する歯ぐきの内面にきれいなピンク色の歯ぐきを移植して、歯ぐきが分厚くなるように縫い合わせを行いました。(結合組織移植術)
歯冠長延長術 1歯 5.5〜8.8万円(税込)
結合組織移植術 8.8〜16.5万円(税込)
予約時間75分 処置時間45分
環境改善により、歯ぐきの対称性が獲得できました(水色の点線)。そして、黄緑の矢印で示すように、適切な高さの根が露出し、かぶせ物の維持力と強度を確保することができ、さらにはお手入れしやすい位置にかぶせ物の継ぎ目を設定できるようになり、予後の向上を図ることができました。
起こりうるリスク:治療後、痛みや違和感、出血、腫れなどが出る事があります。
レーザーを用いて、残った黒い歯ぐきを除去
術後1ヶ月の時点で、残った黒い歯ぐきの部分をレーザーを用いて完全に除去しました(①の改善)。
治療終了時
歯ぐきが治ってから、最終のかぶせ物を作製しました。歯ぐきの黒ずみは取れ、歯と歯ぐきの左右の対称性が得られました。
ジルコニアセラミッククラウン 16.5〜17.6万円(税込)/ 本
起こりうるリスク:強い衝撃が加わると、かぶせ物・つめものが欠けたり割れたりする可能性があります。必ずしもご希望通りの見た目にならない事があります。
材質は金属フレームを使用したかぶせ物の使用を避け、かぶせ物と歯の隙間が空かないように精度の高い治療に努めました。
術前・術後の比較
戦略的に治療を進めていったことで、①②③すべての問題を改善することができ、笑えるようになったと大変喜んでいただきました。
ピンク印:かぶせ治療した部位
機能と見た目とお手入れのしやすさを兼備したかぶせものを製作することが、歯の長持ちと患者様のご満足つながると考え、当院では状況に合わせてさまざまなご提案を行なっていきます。