「歯の神経を抜かないで虫歯治療ができるって本当?」
「歯の神経を抜かない治療ってどこで受けられるの?」
このような疑問をお持ちではありませんか?歯の神経を抜かない虫歯の治療(歯髄温存療法)は、近年注目が集まってきている治療法です。まだまだこの治療を行える医院が全国でも少なく、ネットにも情報が不足しているので、疑問をお持ちの方は多いでしょう。当院でも虫歯治療を検討されている患者様から、よくこういったご質問をいただきます。
このような患者様の疑問を解決するために、当記事では以下の内容を解説いたします。
- ・なぜ歯の神経を残すべき?
- ・歯の神経を残す治療とはどういったもの?
- ・歯の神経を残す治療の2つのデメリット
- ・歯の神経を抜かない治療を成功させる3つのポイント
当記事を読めば、なぜ歯の神経を残す治療が近年注目されているのか、理解できるでしょう。また治療を検討されている方であれば、歯の神経を残す治療のデメリットを知って自分に合った治療を選べます。その上で歯の神経を残す治療を選びたい方は、治療を成功させる3つのポイントを知り、治療を受ける医院選びに役立ててください。
当院の歯の神経を残す治療(歯髄温存療法)については、こちらのページで取り上げています。ぜひ併せてご覧ください。>>歯髄温存療法について
なぜ歯の神経を残すべき?神経を抜かない治療を行うメリットを解説
当記事をご覧になっている方は、歯の神経を抜かない治療に興味がある方のはず。つまり歯の神経を抜きたくない、という希望をお持ちだと思います。では「なぜ歯の神経を抜かないほうが良いのか」あなたはご存知でしょうか?
「歯の神経を抜く」ことには、以下のようなメリットとデメリットが存在します。
- ・メリット①:感染した箇所を除去して感染拡大を防ぐ
- ・メリット②:痛みがなくなる
- ・デメリット①:歯が死んで脆くなる
- ・デメリット②:歯が変色する場合がある
- ・デメリット③:痛覚がなくなりトラブルに気付けなくなる
- ・デメリット④:歯茎に痛みが出る場合がある
- ・デメリット⑤:再治療が必要になることが多い
歯の神経を抜かない治療を行うことで、これらのデメリットを受けずに、虫歯治療を行うことができます。ただし歯の神経を抜かない治療は、全ての症例で行えるわけではありません。「歯の神経を残せない症例」もありますし、「歯の神経を残すべきではない症例」もあります。
歯の神経を抜かないことが絶対的に正しいというわけではない、ということはあらかじめご理解いただいたほうが良いでしょう。
歯の神経を抜くべきか抜かないべきか、という話については、こちらのページでより詳しく取り上げています。ぜひ併せてご覧ください。>>歯の神経は抜くべき?抜かないべき?
従来の虫歯治療では歯髄が露出すると抜髄していた
先述した通り、歯の神経を抜くことにはさまざまなデメリットがあります。たしかに、歯の神経を残せない症例や、残すべきではない症例も存在しています。ただし基本的には、歯の神経は残せるのであれば残すべきです。
ですが、歯の神経を残すための治療は非常に難易度が高く、従来は基本的には歯の神経は抜いてしまっていました。具体的には、従来の方法だと虫歯治療で歯を削った際に、歯髄(歯の神経)が露出すれば、ほぼ確実に抜髄(歯の神経を抜くこと)します。
歯髄が露出すると、よだれなどを介して歯髄に菌が感染し、そこから根管内部にまで虫歯が広がる可能性があります。歯の神経を抜かない治療では、こういったリスクを限りなく低減させることで、たとえ歯髄が露出しても抜髄せずに歯髄を温存することを実現しています。
歯の神経を残す治療とは?覆髄法(ふくずいほう)という選択肢
歯の神経を残す歯髄温存療法では、主に覆髄法と呼ばれる施術を行います。
覆髄法とは従来では抜髄を行っていた、つまり歯の神経を抜いていたような症例で、歯髄を温存するための治療法です。
覆髄法は、歯髄に細菌が感染していない場合に特に有効な治療です。例えば以下のような場合には、覆髄法が使用できる場合があります。
- ・虫歯治療で歯髄が露出するまで歯を削った
- ・転んだり事故で歯が欠けて歯髄が露出した
さらに、歯髄の一部にまで細菌が感染している場合でも、覆髄法が使用できる場合もあります。覆髄法は以下の2種類に分けることができ、それぞれ適した症例に使用します。
- ・直接覆髄
- ・間接覆髄
以下でそれぞれの方法について、より詳しく解説します。
直接覆髄(ちょくせつふくずい)
直接覆髄(ちょくせつふくずい)とは、露出した歯髄に対して、直接薬剤を塗布する治療法です。使用する薬剤は「MTAセメント」で、現状、歯髄温存療法において非常に高い成功率が望める材料となっています。
具体的には、先述したような虫歯治療で歯髄が露出するまで歯を削った場合や、事故で歯が欠けて歯髄が露出した際に有効な治療です。
また、「部分断髄(ぶぶんだんずい)」といって、一部の歯髄を除去した上でMTAセメントを用いる場合もあります。こちらは歯髄に一部感染が認められる場合に、感染した歯髄だけを除去する方法です。ただし歯髄への感染の状況などによって、使用できない場合もあります。
直接覆髄と部分断髄のどちらも、必ず使用できるわけではなく、抜髄してしまったほうが良い場合もあります。そのため状況に応じて最も良い選択を行うのが最も重要です。
間接覆髄(かんせつふくずい)
間接覆髄(かんせつふくずい)とは、深い虫歯治療において歯髄に近い深さまで虫歯を除去した後、歯髄の露出が認められなかったとしても、お薬を用いて歯髄を保護する治療法です。
従来の虫歯治療であれば、歯髄が露出していなくても、歯髄の近くまで歯を削った場合は抜髄を行うのが一般的でした。
歯髄の組織は非常に微細な組織です。一見すると歯髄の露出が認められなかったとしても、微細な神経の枝が露出している(不顕性露髄)可能性もあります。この不顕性露髄の箇所から細菌が感染し、歯髄内部にまで虫歯が拡大する場合があるのです。
間接覆髄では専用のお薬を用いて歯髄を保護し、細菌が不顕性露髄から感染することを予防します。またお薬で保護している間に、歯髄付近に新しい歯質が形成され、微細な歯髄が再び露出していない状態になることも期待できます。
覆髄法にデメリットはある?知っておきたい2つのデメリット
ここまで、神経を抜かない治療法である覆髄法について解説しましたが、覆髄法にはデメリットがあります。覆髄法のデメリットは、以下の2点です。
- ・デメリット①:歯髄を残せない場合がある
- ・デメリット②:治療後に抜髄が必要になる場合がある
覆髄法の最大のメリットは「神経(歯髄)を残すことができる」ことですが、これらのデメリットも加味した上で、覆髄法の治療を受けるかどうかの判断が必要です。
以下でより詳しく2点のデメリットについて解説するので、しっかりデメリットまで理解した上で、覆髄法による歯髄温存療法を受けるかどうか判断してください。
覆髄法のデメリット①:歯髄を残せない場合がある
「歯髄を残せること」がメリットである覆髄法で、「歯髄を残せない場合がある」というと、元も子もないように感じるでしょう。ですが実際のところ、歯髄を残せない場合も考慮しなければなりません。
覆髄法を行う場合、歯髄まで歯を削ってマイクロスコープで細かく観察した上で、歯髄が残せるかどうか検査をします。そのため歯髄まで歯を削ってみて初めて、覆髄法での治療ができないことが判明する場合もあります。
覆髄法のデメリット②:治療後に抜髄が必要になる場合がある
覆髄法では専用のお薬を使用して、歯髄への細菌感染を防ぎます。しかし確実に歯髄を温存できるわけではありません。
もちろん治療時に細心の注意を払い、細菌感染の可能性を排除します。しかしどれだけ注意を払っても、治療後に歯髄に細菌が感染したり、何らかの理由で歯髄炎や歯髄が壊死することを防ぐことはできません。
そのため覆髄法で歯髄を温存したのに、のちのち結局抜髄が必要になるという可能性も、念頭に置いた上で治療を受ける必要があります。
歯の神経を抜かない治療を成功させる3つのポイント!最新機器と丁寧な施術
ここまで歯の神経を抜かない治療である覆髄法について、その特徴やデメリットを解説しました。覆髄法が非常にデリケートで、技術の必要な治療であることは理解いただけたかと思います。
覆髄法を成功させ、歯の神経を温存するためには、以下の3つのポイントを医院が徹底することが重要です。
- ・成功の秘訣①:科学的根拠に基づいた診察
- ・成功の秘訣②:ラバーダム防湿等を活用した感染制御
- ・成功の秘訣③:マイクロスコープによる精密処置
これらのポイントについて、以下でさらに詳しく解説します。覆髄法を用いた歯髄温存療法を検討されている方は、これらを徹底している医院を選ぶことで、より安心して治療を受けられるでしょう。
成功の秘訣①:科学的根拠に基づいた診察
先述した通りですが、覆髄法を用いた歯髄温存療法は、全ての症例で適応できるわけではありません。
例えば覆髄法を用いずに抜髄したほうがいい場合に、誤って覆髄法を用いてしまうと、根管内に細菌を閉じ込めて繁殖させてしまうリスクもあります。そのため「そもそも覆髄法を用いるべき症例なのか」の判断が重要になってきます。
当院の場合には、以下の方法で覆髄法を用いるべきかどうかの判断を行います。
- ・レントゲン撮影を行い歯の根や歯髄の状態を診査する
- ・歯髄電気診で歯髄が生きているか確認する
歯科医の勘や経験だけに頼らず、科学的根拠に基づいて診察することで、抜髄するべきか覆髄法で歯髄を温存するべきか、より正確に判断ができます。
成功の秘訣②:ラバーダム防湿等を活用した感染制御
覆髄法を用いた歯髄温存療法を成功させるために最も大切なのは、感染制御(インフェクションコントロール)です。
露出した歯髄に細菌が少しでも入り込めば、そこから再び感染が始まります。特に施術中には、患歯に唾液が入り込んでしまい、唾液中に含まれた細菌から再感染し治療が失敗する恐れがあります。
そこで必須なのがラバーダム防湿です。ラバーダム防湿とは、患歯だけをゴム製のシートで覆うことで、唾液などによる患歯への細菌感染を防ぐ治療法です。ラバーダム防湿を使用することで、細菌感染だけでなく、器具の誤飲なども防止することができ、安全に治療が行えます。
当院でももちろんラバーダム防湿を活用した覆髄法を徹底しており、覆髄法を用いた歯髄温存療法においてラバーダム防湿は必須の治療法だと言えるでしょう。
成功の秘訣③:マイクロスコープによる精密処置
覆髄法の成功に欠かせないのが、患歯への精密な処置です。患歯における歯髄の露出部位は0.5mmにも満たないことが多く、肉眼で視認するのは極めて困難です。
そのため当院では、歯髄温存療法を行う際には、マイクロスコープを活用します。術野が30倍程度にまで拡大されることから、精密かつ安全な治療が可能となります。
当院の歯の神経を残す治療(歯髄温存療法)については、こちらのページで取り上げています。ぜひ併せてご覧ください。>>歯髄温存療法について
まとめ:歯の神経を残す治療は医院の設備や技術が重要!ご相談は当院まで
当記事では、歯の神経を抜かない治療について解説しました。
歯の神経を抜かないことはメリットが大きく、できることなら歯の神経は抜かずに温存したい方が多いでしょう。ただし歯の神経を抜いてしまったほうがいい場合もあるため、歯の神経を抜くべきか抜かないべきかの判断も重要です。歯の神経を抜くべきか抜かないべきか、という話については、こちらのページでより詳しく取り上げています。ぜひ併せてご覧ください。>>歯の神経は抜くべき?抜かないべき?
歯の神経を残すための覆髄法ですが、以下のようなデメリットがあることも理解した上で、治療を受けるか判断することが重要です。
- ・デメリット①:歯髄を残せない場合がある
- ・デメリット②:治療後に抜髄が必要になる場合がある
確かにデメリットもありますが、覆髄法を用いた歯髄温存療法に成功すれば、歯を生かしたまま残せるメリットがあります。覆髄法を成功させるために、当院でも最新機器を使用し、徹底した衛生管理で成功確率を最大限高める努力をしています。なるべく抜髄せずに、歯髄を残すための治療を行いたい、という方はぜひ当院にお気軽にご相談ください。