症例プロフィール
- 年齢・性別: 30代女性
- 主訴: 噛むと違和感がある

来院までの背景
最近奥歯が噛むと違和感があるということで健診希望のため来院されました。
初診時の状態と診断のポイント

診察および画像検査の結果、歯の周囲に黒い影(赤丸)が確認できました。
このまま放置すると感染の範囲が拡大し、上顎洞炎を併発する可能性も考えられました。
治療方針のご説明
歯根に破折がなければ、感染根管治療を行うことで治癒する可能性があることをご説明しました。
実際の治療内容
- 治療部位:右上大臼歯
- 治療内容:感染根管治療(再治療)

CT画像を頼りに、30倍まで拡大できる歯科用マイクロスコープ下で根管を探索していきました。

すると、隠れた4本目の根管(黄色の点線部)が発見されました。

洗浄には、薬剤や超音波洗浄に加え、超弾性ニッケルチタンファイルやEr:YAGレーザーも併用し、根管内の細菌除去を徹底しました。

根管治療後4ヶ月で画像診断を行ったところ、幸い治療が奏功し周囲の影が消失したため、歯を保存できると判断し、かぶせものを作製して治療を終了しました。
治療期間・回数・費用
- 治療期間:根管治療後、約4か月経過観察を行い、治癒が確認できたため、最終的なかぶせ物の治療へ移行しました。
- 通院回数の目安:
・根管治療:2〜4回
・かぶせ物治療:3〜4回 - 費用:大臼歯 初回感染根管治療 12.1万円(税込)
※土台の補強とかぶせ物の費用は別途となります。
リスク・副作用について
- 治療後に一時的な痛みや違和感が出ることがあります。
- 根の病気が再発する可能性があります。
- 再発した場合、外科的な根管治療が必要になることがあります。
- 歯根破折している場合は、抜歯となる可能性があります。
治療後の注意点・メンテナンス
治療後も状態を確認し、周囲のお手入れやかみ合わせの確認を行うため、3か月に1回程度の定期メンテナンスをおすすめしています。
また、歯ぎしりや食いしばりによる負担を軽減するため、ナイトガード(マウスピース)の使用をご提案しました。
一般的に 神経を抜いた歯は歯根破折のリスクが 高くなります。硬いものを積極的に噛まないよう注意点もお伝えしています。
治療後の経過

術後1年経過時で経過良好です。違和感なく噛めるようになり、日常生活に支障なくお過ごしいただいています。
根管治療のチャンスは一般的に1〜2回と言われています。状況によっては根管治療を試みようとしても、歯が割れていたり条件が悪いと治療自体が適応できないこともあります。とても貴重な1回の根管治療の選択をする上で、是非とも情報収集の上で将来のことを慎重にお考えいただくことをお勧めいたします。
