- 年齢・性別:20代男性
- 主訴:右上前歯の根の先の辺りに違和感がある
来院までの背景
数年前に他院にて根管治療を行ったが、根の先の辺りに違和感があり、再根管治療を希望して当院に来院されました。
初診時の状態と診断のポイント

診察および画像検査の結果、根管内が感染しており、それに伴う炎症反応によって歯ぐきが腫れている(青丸)と考えられました。また、
CT画像では、歯の根の周囲の骨が広範囲に吸収していることが確認でき(黄色の丸)、該当歯だけでなく隣の歯が感染に巻き込まれている可能性があると考えられました。
治療方針のご説明
歯根に破折がないことを前提に、感染根管治療を行うことで治癒が見込める可能性があることをご説明しました。
歯を残す選択肢として、根管治療を第一選択として治療を進めることとなりました。
実際の治療内容
- 治療部位:右上前歯
- 治療内容:感染根管治療(再治療)

まず、ラバーダム防湿を行い、唾液の侵入のない環境づくりを行った上で、周囲をよく消毒してから、30倍まで拡大できるマイクロスコープ下で、根管内に詰まっていた詰め物や汚れを除去後に清掃・洗浄を丁寧に行いました。洗浄には、薬剤や超音波洗浄に加え、超弾性ニッケルチタンファイルやEr:YAGレーザーも併用し、根管内の細菌除去を徹底し、根管充填(根の中の詰め物)を行いました。

根管充填時の状態です。
治療終了時の状態

痛みの症状もなくなったため、根管治療の穴を補強材とともに封鎖しました。
治療期間・回数・費用
- 通院回数の目安:
・根管治療:2回
・修復治療:1回 - 費用:前歯 感染根管治療(再治療) 7.7万円(税込)
※土台の補強の費用は別途となりますが、前歯の場合は状況によってかぶせ物にしない場合もあります。
リスク・副作用について
- 治療後に一時的な痛みや違和感が出ることがあります。
- 根の病気が再発する可能性があります。
- 歯の変色が進んでいく可能性があります。
- 再発した場合、外科的な根管治療が必要になることがあります。
治療後の注意点・メンテナンス
治療後も状態を確認し、周囲のお手入れやかみ合わせの確認を行うため、3か月に1回程度の定期メンテナンスをおすすめしています。
また、歯ぎしりや食いしばりによる負担を軽減するため、ナイトガード(マウスピース)の使用をご提案しました。
一般的に 神経を抜いた歯は歯根破折のリスクが 高くなります。硬いものを積極的に噛まないよう注意点もお伝えしています。
治療後3年時の経過

治療後3年経過時ですが、レントゲン状の影も歯ぐきの腫れもなくなり、違和感なく噛めるようになり、日常生活に支障なくお過ごしいただいています。
根管治療のチャンスは一般的に1〜2回と言われています。状況によっては根管治療を試みようとしても、歯が割れていたり条件が悪いと治療自体が適応できないこともあります。とても貴重な1回の根管治療の選択をする上で、是非とも情報収集の上で将来のことを慎重にお考えいただくことをお勧めいたします。
